じん肺・アスベスト(石綿)関連疾患
じん肺とは
アスベスト(石綿)とは
体内に大量の粉じんを吸入することによって、排出されなかった粉じんが肺の内部に沈着し、肺の機能が破壊されていきます。
じん肺は、進行性の病気で、現代医学でも治すことができず「不治の病」として恐れられており、毎年、療養に専念する必要のある最重症区分のじん肺患者が認定され続けています。粉じん現場を離れてからも症状は進行し、肺結核、原発性肺がん等の様々な合併症を併発させ、その上、心臓まで悪くします。
重症になると、酸素吸入の機械を離せなくなり、セキやタンの発作に苦しみ、最後は呼吸困難に陥り、命を奪われます。
離職しても進行する
じん肺は進行性であり、離職後に見つかるケースがほとんどです。粉じん職場を離職して10年以上にもなるのに「じん肺と診断された」という方が少なくありません。
自覚症状
朝起きるとセキやタンが出る。息苦しさ、息切れ、胸痛、不眠、めまい、動悸、脱力感等を自覚するようになる。風邪を引きやすくなかなか治らない。坂道や階段を昇ると息切れがする。等の症状を訴えるようになります。
じん肺の労災認定基準
じん肺法には、「じん肺とは、粉じんを吸入することによって肺に生じた繊維増殖性変化を主体とする疾病をいう」と示されており、粉じん職場に働く者については、じん肺健康診断にもとづいて、健康管理区分を管理1から管理4までに区分して、健康管理を行うようにしています。
労災保険の適用を受けるのは「じん肺管理区分が管理4または合併症にり患している者」とし、管理区分が管理2・管理3イ・管理3ロの者については6つの合併症が「じん肺と密接な関係がある」となっており労災補償の対象として認められています。
じん肺健康管理区分とは
じん肺は管理区分によって健康管理を行うことになっていますが、この管理区分はエックス線写真と肺機能検査によって管理1から管理4まで決められており、都道府県労働局長により決定されます。
じん肺健康管理区分は、じん肺所見がない粉じん作業者を管理1とし、以下じん肺の病型によって、管理2から管理4まで分けています。エックス線写真の像により、1型は「管理2」、2型は「管理3イ」、3型と4のA、Bは「管理3ロ」、一番進展した4型のCの場合は「管理4」に区別されます。この他に、管理4とされるのは、じん肺の陰影があって、併せて「著しい肺機能障害がある」と判定された人です。
この管理区分に対応する予防措置としては、管理2では職場での粉じんばく露をできるだけ少なくするよう、環境管理を充実徹底させることが重要です。管理3イは非粉じん作業への職場転換の勧奨が行われ、管理3ロは積極的に職場転換を行うよう指示がされます。
じん肺の合併症
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肺結核
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結核性胸膜炎
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続発性気管支炎
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続発性気管支拡張症
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続発性気胸
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原発性肺がん
(注)エックス線写真の像が1型-4型(A・B)であっても、「著しい肺機能障害がある」と判断されると管理4になります。
アスベストは、天然に産出される繊維状の鉱物です。日本に輸入されたものは、白石綿(クリソタイル)、茶石綿(アモサイト)、青石綿(クロシドライト)があります。
髪の毛の5000分の1という極めて細い繊維で、耐久性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの特性に非常に優れ、安価であるため「奇跡の鉱物」として重宝されました。日本では、それらの性質を利用して、外壁材や天井材、スレート材として建物の様々なところで使われています。輸入された1千万トンのアスベストのうち9割が建材として使われました。
このほかにも、自動車のブレーキパッド、石油ストーブの芯、ボイラーやスチーム暖房のパイプの被覆、一時期は化粧品やベビーパウダーなど3千種類を超える製品に使われています。2006年より製造、輸入、使用などが全面禁止となっています。
今後はアスベストが使用されている建築物の解体や震災時のがれき処理などにおける飛散防止といった多くの課題を抱えています。
アスベストの健康障害
アスベストを吸い込むと気管から気管支、さらに肺の一番奥の肺胞にまで入り込み、排出されず体内に滞留します。そのことが原因で、胸膜や肺に病気が発症したり、「がん」が発生するなど重篤な健康障害を引き起こします。また、アスベストを大量に吸入したことによるじん肺を「石綿肺」といい、強い肺機能障害を引き起こします。
アスベスト関連疾患は、それを吸ってから20年から30年以上という長い潜伏期間のあとに現れます。被害は、取り扱っていた本人だけでなく、作業着などを洗濯するご家族、工場周辺に住む住民へも健康障害を引き起こします。
石綿健康管理手帳
アスベストを取り扱う業務に従事していた労働者は、以下の要件が満たされれば都道府県労働局に健康管理手帳を申請することができます。これにより6か月に1回、無料で健康診断を受けることができます。
[1]両肺野に石綿による不整形陰影があり又は石綿による胸膜肥厚があること。(直接業務又は周辺業務が対象)
[2]次の作業に1年以上従事していた方。(ただし、初めて石綿の粉じんにばく露した日から10年以上経過していること。)(直接業務のみが対象)
a.石綿の製造作業
b.石綿が使用されている保温材、耐火被覆材等の張付け、補修もしくは除去の作業
c.石綿の吹付けの作業又は石綿が吹き付けられた建築物、工作物等の解体破砕等の作業
[3] [2]の作業以外の石綿を取り扱う作業に10年以上従事していた方。(直接業務のみが対象)
被害者の救済制度
アスベスト被害者の救済制度は、労働者や特別加入者(一人親方)が対象となる「労災補償」と石綿健康被害救済制度(石綿救済法)による「救済給付」、公務員が対象となる「公務災害補償」があります。
なお、「公務災害補償」の認定基準については、「労災補償」に準ずることになっています。
それぞれ補償内容も請求先も違うことから、「むかし、アスベストに触ったことがあるな…」と心当たりがあったり、身体に異常を感じた場合は十分な確認が必要です。
「労災補償」の対象疾患は、中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水であり、それぞれに認定要件が定められています。また、「救済給付」の対象疾患は、中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚となっており、制度間に格差もあります。
アスベスト被害の多い職種
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石綿含有製品製造工
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石綿吹付け工
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大工
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はつり・解体工
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鉄骨工
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スレート屋根工
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保温工
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空調工
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配管工
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鳶
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セメント工
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ブロック工
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タイル工
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板金・塗装工
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左官工
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床・内装工
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電気工
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造船工
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鉄道関係
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輸送関係
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港湾荷役
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自動車修理
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産廃処理 など
救済制度の対象となる疾病
◎確定診断があれば認定 〇認定基準を満たせば認定 ▲著しい肺機能障害があり、認定基準を満たせば認定
△厚生労働省本省協議 ×救済対象ではない
(注)「石綿による健康被害の救済に関する法律」により、石綿ばく露を原因とする疾病により死亡した労働者のご遺族で労災保険法の遺族補償給付を受ける権利が時効により消滅した方に対し、特別遺族給付金が支給されます。
(請求期限は令和4年3月27日まで)